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大阪高等裁判所 昭和24年(を)2457号 判決

被告人

明玉

外二名

主文

被告人明春東同李周寬の控訴は何れも之を棄却する。

原判決中被告人明玉に対する部分を破棄する。同被告人に対する麹の無免許製造についての公訴は之を棄却する。

被告人明玉を懲役十月及罰金四万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金弍百円を壱日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。原審の訴訟費用はその三分の一を同被告人の負担とする。

理由

前略

第一点について、

酒税法違反事件について公訴を提起するには收税官吏、財務局長又は税務署長の告発をその形式的訴訟條件とするものと解すべきところ被告人明春東に対する柏原税務署長の告発書には同被告人は昭和二十四年一月日不詳より昭和二十四一月日不詳の間に明玉と同一意志の下に燒酎三斗を製造しと記載し檢事の起訴状及原判決によれば被告人三名は共謀の上昭和二十三年八月中頃から昭和二十四年一月末頃迄の間約十五回に亙り燒酎二石六斗を製造しとあつて檢事は被告人のこの無免許燒酎製造の一連の行爲を包括一罪として起訴し原判決も同一趣旨の下に之を認定したものと認められるから訴訟條件たる告発の欠如を主張する論旨は当らない。而して原判決挙示の証拠を綜合すれば被告人明春東は昭和二十三年八月中頃相被告人明玉及李周寬より酒密造の相談を受けて之を承諾し同人等にその資金なきため酒造の場所として被告人が知人足立銀四郞と交渉の末同人の鷄舍を被告人名義で代金八千円で買入れ器具として「たて」「はんぎり」等を提出しその後は米、麦等原料の集荷方を受持ち保有米を支出し他で大麦を買受け資金として、約三万円を貸與し時には相被告人両名の酒密造現場でその手傳をしていた事実が認められる。かような事実に基いて被告人を共同正犯者と認定した原判決は正当であつて被告人は從犯に過ぎないと主張する論旨は理由がない。

以下省略

〔註〕 明玉の判決破棄は、主文記載の事実につき告発がなかつたことによる。

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